KING CASTLE
「なっ!!」
ムカついて顔を上げて睨みつけると、らしくなく真剣な顔をした伊吹がいた。
「俺の前で男と話すんじゃねぇよ」
その目を細めて、冷たい視線を送られる。
心臓が脈打ったのを感じたけれど、気付かれないようにした。
「飼い猫は飼い主にだけ懐いとけ、チビ」
「猫って…!」
反論しようと口を開いたけれど、頭を叩かれて終わり。
そのまま伊吹は自分の鞄とあたしの鞄を持ってくる。
「さっさと帰るぞ」
そういいながらあたしに鞄を渡した。
無言でそれを受け取りながら、無言で伊吹の後を着いて行く。
またキスされた。
また、キスされた!
本当にあり得ない。
好きじゃない人にキスするっていう自体があり得ない。
そう思って睨みつけると、周りの風景があたしの家に向かっていることを示す。
「ちょ、あんた家逆方向なんでしょ!」
「……」
絶対聞こえてるだろ。