KING CASTLE

広いキャンパスに描かれた二つの影。
腕を掴む手のひらにそっと筆を入れて、完成した。


「ふー…」

思わず絵をみて、溜息を零す。

できた。

いつの間に皆帰ったのか、美術室にはあたし一人しかいなかった。


「生徒会、行かなきゃ」

一つ呟いて絵の具を片付け始める。

もう暗くなってるけど、龍聖との約束だし。


そう思いながらまた窓の外に目をやると、冷や汗が吹き出た。

遠くの空でかすかに、厚い雲が光ってるのが見える。


目を見開いて、心臓がバクバクいうのを荒い息でなんとか落ち着かせながら、鞄を持ち上げた。

怖い、怖い、怖い。

もう今にも、こっちに来そう。

小さなゴロゴロという音が、聞こえてきた。

それに比例して、心臓の鼓動が高まってきた。


怖い。早く、早く帰らないと。


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