KING CASTLE
「雷…?」
伊吹はそう呟いてから、うつむくあたしの頬に手を伸ばした。
いつもよりずっとゆっくりに、慎重に頬に触れる。
未だゴロゴロと鳴っているせいで、止めようと思っても涙が溢れ出してきた。
伊吹の指が、顎を掴む。
前みたいに乱暴じゃなくて、恐る恐るだった。
そっと顎を上に向けさせられると、伊吹と目があう。
少し困惑した表情を浮かべてるけど、いつもの瞳。
何故か、安心してしまった。
伊吹は顎から手を離して、あたしの腕を掴む。
「いぶっ…」
小さく声をあげる途中で、あたしの腕を引っ張った。
「なっ…!」
「黙ってろ」
廊下に座り込んだまま、大きな手のひらに包み込まれる。
雷の音を聞こえないように、優しく耳を覆われた。
いつの間にか降り出した雨が窓をたたき、
大きな雷の音が空に響く。
いつもは怖くて震えているこの空間なのに、
今日は安心してしょうがなかった。
伊吹の手が、ゆったり頭を撫でてくれるのを心地よく感じながら、静かに目を閉じてしまった。