忘却は、幸せの近道
ようやくたどり着いた屋上。


そのドアを開けると、あの日の自分がいた。


あの日の衝動と今日の衝動が似ていることを思い出す。


繰り返してしまう。


あの日のように、飛び降りたいって思う。


あの囁きは、私を地獄へ突き落とした人。


どっかに消えて。


違う。


わかった。


私が消えればいいんだ。


どんどん思考が壊れていくのがわかる。


なにもかも思い出してしまったから。


卓、ごめんなさい。


やっぱり、私は、ここには居てはいけない。


バカな私を許してとは言わない。


ただ私以外の人と幸せになって。


それだけを望む。


まさかの急展開。


けど、あいつはわかっていたのかも知れない。


私の闇の部分に巣くっていたんだ。


だから、居ないはずのあいつの声が聞こえてくる。


記憶をなくしながらも、あいつはずっと私の中にいた。


記憶を取り戻した私には、強烈に追いつめるほど。


胸に手を当て、深呼吸した。


そして、心で呟いていた言葉を口にした。


「卓、愛してるけど、ごめんなさい。」
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