忘却は、幸せの近道
「ちょっと出かけてきます。」


「どこにだ?」


いつもは、『いってらっしゃい』だけなのに。


しかも、沙奈ちゃんが言うぐらい。


けど、みんなが私に注目している。


でも、言えないよ。


病院に行くだなんて。


せっかく、忘れた振りをしたのに。


意味がない。


これからは、みんなを騙して行くんだから。


このぐらいの演技ができないと意味がない。


「友達と遊ぶ約束してたの。」


私は、笑顔で答えた。


うまく笑えてるよね?


「....そうなのか?」


「うん。
みんなが部屋からでたら、電話が....ね。」


「なるべく早く帰ってくるんだよ。」


いっくん、無意識だろうけど。


言い方がキツくなってる。


「うん。
行って来まーす。」


第一段階クリア。


これからは、嘘まみれの生活。


汚い私には、ピッタリだ。
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