忘却は、幸せの近道
「梨依。」


私が考え込んでいたら、卓に抱きしめられた。


暖かい。


あの日、待っていた暖かさ。


こんな風に抱きしめられることを望んでいた。


ただ、それだけだったのに。


あいつがいようがいまいが関係なかった。


ただ、暖かさや温もりが欲しかった。


悲しみや辛さを逃げずに分かち合いたかった。


それだけだったのに。


それは、多くを望んだことになるのかな?


だから、私は....


望まないことにした。


だって、望んでも無理だってわかったから。


みんなは、私を必要としてない。


血のつながりあるから。


家族だから。


それだけの事。


けど、違ったんだね。


わからなかったんだね。


卓の温もりで気づく。


「ありがとう。
生きたいよ。」


私は、それだけを言って意識が遠のいた。
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