忘却は、幸せの近道
第二章〜眠り姫が目覚めるまで〜

祈り

「いつ目覚めんだろう。」


俺は、病室で眠る梨依を見ながら、呟いた。


あの日から、一年。


あの日とは、梨依が自殺未遂をした時だ。


病院の屋上で気絶したまま目覚めていない。


原因がわからない。


ただ、梨依は現実から逃げた。


けど、仕方ない。


今まで、頑張りすぎたから。


家族のために自分を犠牲にしてきた。


俺が梨依でもそうなるだろう。


ただ、俺は、男だから理解しきれない部分もあるかもしれないけど。



梨依、目覚めてくれ。


俺、梨依がいないと強くなれない。


頑張れない。


情けない俺になっちまった。


呆れるだろ?



起きて笑ってくれよ。


俺、梨依の笑顔がみたい。


俺は、梨依の手を握り祈りながら念じた。
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