忘却は、幸せの近道
「あいつ、俺が、梨依の兄だって知ってたから、近づいて来たんだろうな。
いい奴だと思ったのに....」


梨依の二番目の兄さんは、やはりショックらしい。


「お前が悪いわけじゃない。
ただ、人を見る目を養えよ。
梨依が、死ななかったからいいものを。」


「わかってるよ。
けどさ。
教師やってたら....
まあ、俺のせいだな。
頑張ってる梨依を追いつめたんだから。」



俺は、何も言えないけど自分を責めないで欲しかった。


梨依は、あなたたちが笑顔で暮らすことを望んでいるのだから。


それに、俺だって教師って聞いたら、疑わないだろう。


聖人がなる職業みたいな感じだから。


「教師か.....
まあ、自分を追いつめるなよ。
余計に梨依が責任を感じるだけだ。」



「わかってるよ。」


たぶん、梨依の兄弟は、自分たちを責め続けるだろう。


やりとりを見ながら気づいた。


相手に言ってる言葉が、自分に言い聞かせてるように聞こえるから。
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