忘却は、幸せの近道
私は、覚悟を決めてゆっくり屋上へ向かった。


ゆっくりゆっくり向かっているのに。



変な記憶が走馬灯のように舞い込んでくる。


みんなを振り切って、病室から飛び出して屋上に向かっている自分。


なぜか涙が溢れてくる。


涙を流さないように必死にこらえるけど。


無理みたい。


私は、もしかして、開けてはイケないパンドラの箱を開けてしまったみたいだ。


気づいた時には、もう遅かった。


足が止まらない。


病室に戻りたいのに。


引き返したいのに。


屋上に向かってしまう自分。


真実を知ることを怖いと思ってしまった。


卓、助けて。


みんな、ごめんなさい。


真実を追い求めていたのに。


偽りの世界でもいい。


たぶん、私は知ってしまう。


屋上についたら、記憶を取り戻すだろう。


予感じゃなくて、確信。


だって、屋上に向かいながら、どんどんと記憶が舞い戻ってくるから。


まさか、屋上がターニングポイントだなんて。


みんな知っていたのかも知れない。
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