カラフル
プレゼントは思いつかない
二酸化炭素を吐き出すと、低い体温の所為で息が白く濁った。
鈴の音、イルミネーション、ツリー。まぁ飾りを始めるのは大抵薄暗くなった夜からだけれど、とりあえず本日12月24日は誰もが知っているクリスマスイブだ。
『恋人達のクリスマス』なんて名曲もあるくらいだから街はカップルで溢れかえるのだろうなと考えては苦笑した。冷たくなった手に息を吹きかけて早朝の並木道を通る。
そりゃあ俺だって彼女はいる。クリスマスだし、いつもよりムードのあるデートにしたいと思うさ。だがとにかく俺は今焦っていた。『彼女へのプレゼントが思いつかない』という理由で。
指輪とかアクセサリーが無難だと思うだろう。だけど彼女はそんな高いものいらない、と必死になって訴えた。俺だってそこまで高いものは買おうとは思わないが、アクセサリーとは別のものをあげたほうが彼女が喜ぶのは明確だった。
ふと、彼女の好きなものを考えてみる。花(何か安っぽくないか?)、流行のロックバンド(しまった、名前を知らない)、星(どうしろと)。
思い返してみると俺は彼女のことをよく知らないんだな、と今更ながら確認する。