俺様な死神研修生!
家の前。
インターホンを鳴らすことがこんなにも怖かったことは一度も無い。
「押さねぇの?」
「あ!ちょっと!」
というなり恭汰が押したインターホン。
ピンポーンという地獄の門が開く音がした。
「はい。」
にこやかに顔を出したのは40代の女性。
少し厚めの化粧のせいか臭う化粧の粉っぽい臭い。
その彼女はそのにこやかな仮面を私を見るなり脱いで冷たく、鋭い顔を現した。
ほら、心配なんてしていない。
帰ってこなければよかったのに、という顔をしてる。
「陽菜・・乃。」
「お久しぶりです、母さん。」
さりげなく後ろを見れば恭汰の姿は無い。
嘘つき、俺がついてるって言ったのに。
「どこに行っていたの?」
「心配かけました。」
「話は積もるわ。さ、入りなさい。」
「いいえ、ここでいいよ。」
「何言っているの?」
家に入る勇気なんて無かった。
家に入ったらもう出られないような気がした。
ここなら逃げられる。
玄関なら大丈夫。