120円の恋心
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ジャージ3人組が行ってしまうと、荻窪はひとりで大浴場へ入った。
温泉の向こう側はガラス張りで、外が丸見えだ。
だが当然その場所へ立ち入ることは出来ないので、覗くのは簡単なことではない。
3人は覗きに成功しているのだろうか、と考えると胸がざわついた。
寂しさからではない。
荻窪が密かに想いを寄せる北村麗華も、風呂に入っているかもしれないからだ。
そう考えると、気が気ではなかった。デジタルカメラを持っている人もいた。
もし撮影などされたら――。
風呂から上がり、着替えて更衣室を出ると、浴衣に着替えた女子の集団が隣の更衣室から出てきた。
そのなかには、麗華もいた。麗華は荻窪が所属するテニス部のマネージャーだ。
普段、制服姿やジャージ姿は見慣れているのだが、浴衣姿は新鮮だった。
元々の美貌が、さらに際立っているように感じられた。