120円の恋心
 

***


 売店の前は、広間になっている。

金を持って売店へ向かった荻窪は、そこで捕まっている3人組を見つけた。

元々声の大きいテニス部の顧問が、彼らを怒鳴りつけている。


「おまえらっ! 女風呂を覗こうとしてたらしいなっ! ふざけるなっ、バカ者がっ!」


「いや、違うんすよ。たまたま落しモノをしちゃって取りにイッただけなんすよ」


 デジタルカメラを構えながらなにを言い訳しても無駄だろう、と思いながら荻窪は彼らの横をすり抜け、売店に入ろうとした。

すると、


「あ、荻窪!」


 ジャージ3人組のリーダー格に呼び止められてしまった。


「オイ、なに自分だけ逃げてんだよ。おまえも一緒にノゾこうとしてただろ!」


 とんでもない言いがかりだ。荻窪は立ち止まり、たじろいだ。


「おまえらっ、やっぱり覗いてたんじゃないかっ! 荻窪っ、そうなのかっ!?」


 返答に迷った。当然、覗きなどしていない。

だが、ここで反論してしまったら、友情にひびが入ってしまう可能性もある。


「……………………うん」


 ここで認めても、ただ怒られるだけだ。それだけで、平和は保たれる。

適当に合わせておけば、乗り越えられるのだ。
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