春。[短編10P][ホラー]
「私はママの味方よ」


 珪夏がそう言い部屋の隅に座り込んだ時、利典がリビングに入ってきた。


 すべてが愛しかった利典。それが他の女の所に居たかと思うと、こんなに気持ち悪いと思えるものだろうか。不思議なほど自分が冷えているのが分かる。


「ただいま。どうかしたの?」


 いつもは玄関まで迎えに行くので不思議に思っているようだ。少し、心配した顔。白々しい。


 ふと、利典が珪夏を見つめた時、私は後ろ手に隠していた包丁を振りかざした。


「――!!」




 何度も利典を刺した。憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い。




「な……」



 驚愕の表情の利典。ゆっくりと倒れていく。ヒューヒューとおかしな呼吸をしながら何かを喋ろうとしている。言い訳など聞くつもりはないけれど。








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