ささやかな奇跡
1.うてな
その屋敷は、人も獣も近づかぬ、峻険な山の頂きに建っていた。

屋敷の前には庭があり、庭の真ん中に池があり、一抱えほどもある大きな蓮の花々が、純白の花弁を広げていた。

ゆらゆらと揺れる花の一つには狩衣姿の童子が座っている。

長い睫ごしに半目を開き、じっと物思いにふける表情は、あどけない外見を裏切って、静かな苦悩をたたえていた。


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