ささやかな奇跡
「念仏を唱えるだけで良いということで、誰も彼もが南無阿弥陀仏を唱えております」

庭を見下ろす縁側で、高耶の話を聞きながら、慈尊は重いため息をついた。

このごろ都では、法然という修行僧の教えが、急速に広まっているというのだが、念仏一つ唱えるだけで人は救われるものなのか。

だとしたら、人を救うすべを延々と捜し求めている自分は、とんでもない愚か者だ。

「お前もそう思うだろう?」

苦し紛れに自嘲して問えば、高耶は即座に否定した。

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