ささやかな奇跡
長いまつげの下の黒目勝ちの瞳が、興味深そうに慈尊の顔を見つめている。

肩のあたりで切りそろえた髪には、衣と同じ布でこさえた薄紅の花を飾っていた。

「蓮、おいで」

名に違わぬ愛らしい幼子は、高耶が手を差し伸べると、一点の迷いもなくその腕の中に飛び込んでいく。

高耶の腕の中でにこにこと無防備に微笑む様は、この世のありとあらゆる幸せを、わが身一心に集めているようで、あらためて慈尊を驚かせた。
< 15 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop