ささやかな奇跡
用意されたささやかな酒肴。

流れ出す琴の音。

下女も下男もそれぞれの家に戻り、都外れの小さな屋敷には、少女と自分の二人しかいない。

(月を愛でながら耳を傾ければ、練習の成果は十分に出ているが)

琴に向かう必死の横顔をそっと見て、高耶は唇をほころばせた。

育て親の青年と違い、どこか不器用な少女は、何をするにも一生懸命で、それがまた、微笑ましくもあるのだった。


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