ささやかな奇跡
「いかがでしたか?」

曲が終わり、高耶は現実に引き戻された。

頬を紅潮させた美少女が、期待に満ちた眼差しを向けてくる。

「見事なものだ。聴き手が私だけというのも惜しい気がするね。貴族が集まる都の宴で弾いてみるというのはどうだろう? そうすれば、お前にふさわしい若者が、見初めてくれるかも知れない」

蓮は困惑した面持ちで、ゆらゆらと瞳を揺らし始めた。

そんな様子を冷静に観察している自分は、今、「男」の顔をしているに違いない。

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