ささやかな奇跡
「いやです」という拒絶の言葉に、高耶は、内心、胸を撫で下ろした。

だが、欲しい答えを得ることができたにも関わらず、それだけで満足できないのはなぜなのか。

「どうして」
「蓮は、高耶さま以外の殿方は嫌いです」
重ねて、「どうして」と言いかけて、高耶は言葉を飲み込んだ。

潤んだ瞳を向けられて、高耶は強いて笑顔をつくった。

いつまでも、こんなことを続けていて、良いはずはない。

こんなことが、許されるはずはない。

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