ささやかな奇跡
よくよく見れば、痩せて貧相な赤子だった。

弱々しい泣き声をあげていたというが、今は泣くことすらできずにぐったりしている。
高耶に拾われていなければ、今頃は路上で骸をさらしているか、野犬の餌にでもなっているに違いない。

(これでは、とても育つまい)

慈尊はそう結論付け、結論付けた途端に興味をなくし、弟子と赤子をその場に残し、屋敷の奥へと姿を消した。
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