あなたのスッピンも大好きです。
*スッピンから美人顔へ
次の日、
僕は勇気を出して一番奥の席まで歩いて行くと、車内を見渡しながらゆっくりと座った。
もし、また彼女が乗ってくるようなことがあれば、この座席からの方が彼女を見やすい。
昨日は振り返らなければならなかったから…
僕は彼女が乗ってきてくれる事を胸に、その時を待った。
アスファルトの上を走るタイヤが徐々に速度を落としていく。
そして前屈みになり
ブー……
ブザーが鳴ってドアが開く――…
トントントン。
僕は、息を飲んだ――
昨日の……
のっぺらぼう――。
イコール、彼女だ。
乗ってきてくれた事の嬉しさと、
やっぱり何もない顔に
気持ちがちぐはぐしているけれど、僕は彼女に気付かれないように、
でもしっかりと彼女の動きを目で追った。