あなたのスッピンも大好きです。
彼女は座席に座ってすぐにバックからさらに小さな入れ物を取り出し、
さらにその中から手のひらサイズの物を取り出してパカッと開けると、
鏡が姿を現した。
そして…
お、ぉおおおお!!
もうそこからは実況不可能。
だってあまりのスピードで手際よくいろんな作業が行われて、
それは僕には未知の世界で…
何がどうなってそうなるのかさっぱり分からない。
だって無いに等しかった顔に目、眉、鼻、唇が姿を現すんだから。
僕が唖然としてしまっているうちに、のっぺらぼうだった彼女の顔は
昨日の美しい女性の顔へと変わっていた。
大袈裟に言ってしまうと、魔法を使った? とでも聞いてしまいたいぐらい、スピーディーで見事な変身ぶり。
作業を開始してから四、五分の出来事。
そして変身道具をバックにしまうと同時ぐらいに、バスは次の停留所に停まり、ブザーを鳴らす。
僕と彼女だけの空間は終わり、昨日と同じように二人の女子高生が車内を黄色に染める。