あなたのスッピンも大好きです。
*気付いてしまった恋心。そして―
言った。
言ってやった…。
僕だけの秘密ではなくなってしまったけれど、
これで彼女が奪われずにすんだのなら、惜しくはない。
ふっと息をはき、視線を和哉に向けると――
えっ?
な、何?
視線の先の和哉は、
僕を憐れむような顔で見ていたんだ。
そして口を開いた。
「お前何言っちゃってるの? あんな美人が化粧落としたぐらいでそんなんなるわけないじゃん」
「……へっ?」
「それに大人の女性と言うのは化粧をしてる時と落とした時のちょっとしたギャップがいいんだぞ」
「……ぎゃっ、ぷ?」
「その良さがわからないようじゃ、お前はまだまだ子供だなぁ」
僕はまたまた口をあんぐり。
…………
って、いや、いやいやいやいや!
そうじゃないんです!
その魅力も分からないでもないんですが、
違うんだって!
彼女は例外で、あの化粧の下に隠された顔はのっぺらぼうなんだって!
ギップがありすぎるんだって!
そう言ってやりたいんだけど、僕の意見を聞き入れるなんて思えなかった。
だって和哉は僕を恋心も分からないお子ちゃまだって思っているから。
ま、確かに恋心なんて分からないけどさ!
じゃなくても、彼女のあのスッピンを誰が信じよう。
親が言ったって、先生が言ったって、総理大臣が言ったって、
きっと信じられないと思う。
本物を見なければ誰だって信じない。
となると、もう正当なことは言ってられない。
もう意地だ。
ヤケクソだ!
僕は腹をくくった。
「和哉、よく聞け!」
和哉の両肩をつかみ、和哉の体を僕の真正面に向けさせた。