あなたのスッピンも大好きです。
僕は眼鏡を押し当て、真っ直ぐ前を見たまますっと立ち上がった。
「ん? どうかしたか?」
「ちょっと、言ってくる」
「はっ? 誰に……って、ちょっ、おいおいおい」
僕は和哉を無視して歩き出した。
立っている乗客の間を突き進む。
僕の名前を呼ぶ和哉の声も
何だ何だと振り返ってくる乗客の視線も
今の僕には関係ない。
彼女を守りたいという気持ちが今の僕を突き動かしているんだ。
この想いは止められない――
一歩ずつ近づいてくる彼女の背中。
そして僕は彼女の所まで来ると、立ち止まった。