あなたのスッピンも大好きです。


……だ、誰でもいいから早く乗ってきて…



乗って早々の僕の心の叫び。



無事に乗り込むことは出来たものの、僕は奥まで歩いていく勇気がなくて、

車内に足を踏み入れてから五歩も進まないうちに座席へと座った。


運転手さんはいるけれど、乗客は僕一人。



初乗車で僕一人なんて……



車内は妙な静けさで、


エンジン音とアスファルトの上を走るタイヤの音だけで……


僕の脳裏を過ったのはホラー映画――


や、やめてよ!!


って連想してしまった自分の脳を叱り付ける。


僕はブンブンと頭を振った。



落ち着け、落ち着くんだ。



何度も何度も心の中でつぶやいて冷静を保とうとするけれど、


夜中の二時三時に一人でトイレにいけない僕が、この状況から簡単に逃れられるわけがなかった。



怖い


怖い



そんな気持ちばかりが募っていったその時、


車内にブザーの音が鳴り響いたんだ。



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