金髪の君*完結



「可愛い…」


蟹の足が手の平を刺し痒いが、小さくて可愛い蟹に頬が緩む。
その場にしゃがみ、蟹を観察する。


「あっ!」


蟹は自ら手の平から落ちそのまま横歩きで岩場の影へと逃げ込んだ。


蟹がいなくなって淋しくなった手の平。
今頃になって痒くなり、もう片方の手で掻く。
蟹の逃げた方へ視線を向けると、顔に影が出きた。


「はは…」


影の元を見て乾いた笑いが出てしまった。


「……」


頭上か無言で見下ろす心。
顔は無表情で何を考えているのかがわからない。


「あっ、蟹逃げられちゃった…」


心の顔色をうかがいながら声をかける。



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