金髪の君*完結



「ぐ、偶然…」


海に私服の男。
偶然なわけがない。
いつの間にか目の前にいた男から離れようと、震えて立っているのも辛い足で一歩後ろへ下がる。


「わ、わか、たけん、ご…」


下がりながら目の前に立つ男の名を呼ぶ。


世界で一番大嫌いな男の名を…


「へぇー、覚えててくれたんだ。」


ニヤニヤ笑う男、若田健吾(ワカタ ケンゴ)を見て吐き気が込み上げる。


どうにかこの場から逃げようと頭をフル回転させる。

若田が数歩離れた私に近づこうと足を動かした瞬間、携帯の着信音が鳴り響く。


「ちっ」


若田は舌打ちをした後、ジーンズの後ろポケットから黒の携帯を取り出しボタンを押して会話をだした。



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