金髪の君*完結



「あ~ぁ、惜しい。」


ケラケラ笑う若田の声。
心に抱きしめられている私は若田の姿を確認できない。


「若田。」


頭上から地を這うような心の低い声にビクッと肩を上げた。
そんな私に気付いた心は背中を摩る。


「この前の答えは"ノー"だ。」


「へぇ~、俺は別に構わねぇよ。
楽しくなりそうだな。」


「いつでも受けてやるよ。」


「まぁ、せいぜい別れを惜しんでおきな。
葵は必ず手に入れてやる。」


若田の言葉に心は私に回した腕に力を入れた。


「また近々あおーぜ。」


路地裏の奥へと歩きだした若田の足音は徐々に聞こえなくなった。


< 565 / 858 >

この作品をシェア

pagetop