金髪の君*完結
あなたとの距離
若田
「よぉ」
「……」
「そぉ睨むなよ。」
「……」
「電話してきたのは葵だぜ?」
「……」
「ふーん、まぁいいか、出せ。」
若田の一言で黒い高級車は滑らかに走り出した。
後部座席に座る若田と私。
若田を視界にいれたくなくて、自分側の窓に顔を向けた。
流れる景色を見ながら思い出すのは、昨日の電話での会話。
「もしもし、葵だけど。」
「あぁ、待ってたぜ。」
震える声を隠すために強い言葉でごまかす。
「あんたの彼女になる。」
「へぇ、そりゃぁありがたいな。」
「条件がある。」
「あー、分かってるよ。
"お友達"には手を出すなだろ?」
「そう、じゃ」
これ以上、若田の声が聞きたくなくて、自分の用件だけを言い電話を切った。