金髪の君*完結
「何?」
前を歩く若田の背中を睨む。
「いや、クッ、な、なんでも…-クッ…ねぇ。」
「……」
意外だった、車の中では目は笑っていなかったのに、今は肩を震わせて笑っている。
私には若田は恐怖の対象で、こんなに穏やかな雰囲気になるとは思わなかった。
--悪い奴じゃないのかも…
そう思ってしまう私がいた。
けど、前を歩く男は、私から大切な物を奪っていった…
…恨むべき存在。
自分に言い聞かせながら、若田の後にガラス張りのエレベーターへ乗り込んだ。
チンッとエレベーターは目的地に到着したのを知らせると、目の前の扉が開いた。
「こっちだ」
声をかけられたが、手を引かれている私は"あっち"には行けないと思う…と考えていた。
若田は突然歩を止めると、持っていたカードを機械に通した。
私はこのカードを見るのは3回目。
1回目は下のロビーで、2回目はエレベーターの中、そして3回目は今。
周りに気を取られていた私は、カードのことに気付いていたが聞くことは無かった。
「ねぇ、そのカードって何?」
今更な質問を投げかけた。