金髪の君*完結
「何だその荷物は…」
1時間まであと2分と微妙な時間に、焦りエレベーターのボタンを連打する私の背後から聞こえた声に振り返った。
「えっ?なんで?」
「荷物持つ。」
私の言葉を無視し、両手いっぱいの荷物を奪うように取った若田は
「やっぱ、少し持て。左手に。」
紙袋を2つ私の前に突き出した。
「あっ、うん。」
目の前の荷物を素直に受け取り、左手に持った私を確認すると
「行くぞ。」
私の右手を取り、タイミングよく来たエレベーターへ乗り込んだ。
沢山の紙袋を持った手で、ボタンを押す若田に
「ありがとう…」
お礼を言うと
「あぁ」
ぶっきらぼうに答えた若田の顔は赤かった。
チンッと音がなり開いたドアを出て、車に向かった私達に待っていたのは
「ぶっ!あはははは!
健吾が荷物持ってる!やべー!写メ!ぶふっ!」
「ぎゃはははは!」
「……」
新しくなった携帯片手に爆笑する柳に、腹を抱え笑い転げる泰、そして驚愕する運転手の3人。
隣に立つ若田のおでこに青筋が浮かんでいるのは、気のせいじゃないと思う。
そんな若田にいち早く気付いた運転手は、素早く車から降り若田と私の荷物をトランクへと入れた。