金髪の君*完結
あんなに嫌だった若田の隣が、今日1日だけで若田の隣が私の居場所となっていることに気付いた私は
「葵のマンションへ向かってくれ。」
運転手に声をかけた若田に
「あっ、家には帰らないよ。」
驚く若田に笑顔で「泊まるからよろしくね」と伝えた。
「あっ、なんかご飯の材料買いに行こうか?
明日からご飯作るよ。」
話しを進める私に驚愕し、口をポカンと開け見つめる若田。
「まじで!!明日から家事しなくていいの!?」
隣に座っている泰が、私の腕を引き嬉しそうに目を輝かせた。
「今まで、泰が掃除してたの?」
首を傾け聞く私に
「いやぁ…、後輩が…」
泰は目を泳がせ呟いた。
「ふぅ~ん、自分が住む家なのに人任せなんだ。」
「なぁ」
「えっ?」
目を細くし泰を見る私は、声をかけられ上半身ごと声の主の若田へと向けた。
「名前…」
「名前?」
「泰のことは下で読んでなんで俺は…」
言葉を途中で止めた若田は、
「彼氏の俺は苗字なんだよ。」
不機嫌な声で言った後、窓へ顔を向けた。