金髪の君*完結
「もしもし?」
一緒に暮らしている私達は、電話をする機会もなく、実はこれが初めてだ。
ドキドキしながら出た私の耳に
「今平気か?」
聞き慣れた声が聞こえた。
「今テレビ見てた。
ちょっと待ってね…」
持っていたリモコンでテレビを消すと、リビングは物音一つなくなった。
「どうしたの?」
「弁当忘れた…」
健吾の言葉に、立ち上がりキッチンへ向かった。
「あっ、ホントだ。」
視線の先には、黒の小さなバッグに入ったお弁当箱。
「お昼代あるよね?
これ私が食べるから、何か買って食べて?」
カウンターキッチンに置かれた弁当を持ち、リビングへ戻った。
「あ゙ー、持ってきてくんねぇ?」
「えっ?何で…?」
電話を持ったまま首を傾けた。
「葵の弁当が食いてぇ。」
小さく言った声は、しっかりと私の耳に届き
「じゃぁ持ってくね。」
嬉しくて頬が緩んだ。
「車、向かわせたから。学校に着いたら電話して。」
「わかった。」
私の返事を聞くと、電話は切れた。
今の時間は11時4分。
昼休みにはまだ間に合う時間だが、私は早く健吾に会いたくて急いで支度し、家を飛び出した。