金髪の君*完結
ドアは全てオートロックなため、走りながらドアが閉まる音を確認しマンションを出た。
マンションの前に横付けされた車の前に、見慣れた男の人が1人。
「斉藤さん!」
車に駆け寄ると
「おはよう、葵ちゃん。」
斉藤さんは後部座席のドアを開けた。
「おはようございます。」
頭を下げ挨拶をし、後部座席へと乗り込んだ。
斉藤さんは運転席へ座ると、車を発車させた。
私は車内に流れる曲を聞きながら窓の外を眺めた。
斉藤さんが運転する車に乗ったのは数えきれないほどあり、遊びに行ったり買い物に行ったりする時に、必ず斉藤さんの送迎つきだった。
窓からルームミラーへ視線を向けるとバチッと交わった視線。
ルームミラーの中の斉藤さんは歯を見せ笑った。
その笑顔に釣られ、私も笑顔を斉藤さんに向け、視線を窓の外へと戻した。
健吾に聞いた話だと、斉藤さんは24歳で柳のお父さんの会社に勤めているらしい。
将来は、柳が会社を継ぎ斉藤さんは柳の補佐となる予定だとか。
今は、柳専属の運転手をし手があけば会社に戻り仕事をしているみたい。
前に、忙しい斉藤さんの車に乗るのを渋る私に
「これが、私の仕事ですから」
と斉藤さんは笑顔で言った。
それからは、渋ることも躊躇することもせずに乗せて貰っている。
「着きました。」
車が止まり、運転席から振り返った斉藤さんに
「ありがとうございました。」
とお礼を言い車を降りた。