金髪の君*完結
「--っ…嫌だ!!」
掴まれた手を離そうと、進行方向とは逆に体ごと力を入れた。
そんな私達を見る生徒達。
私達を見て、再び窓の外へと視線を向ける生徒達は、グラウンドの真ん中にいる人物を見ているから。
「な、なんで…」
「葵。」
「なんで、しんちゃんがいるの!」
「葵。」
「嫌だ!!」
「葵。」
「行きたくない!」
「葵…」
我を忘れ叫ぶ私を、健吾は抱きしめた。
健吾の温もりを感じ、我に返った私は
「--健吾ぉ…」
健吾の胸に額を付け、涙を流した。
「大丈夫だから…」
健吾は優しい声で囁き、背中を摩った。
落ち着いたのを確認すると、再び手を引き歩きだした。
教室を出るときに泰と陸斗の「ばいばい」と言う声が聞こえた気がした。
"ばいばい"の意味は私にはわからない。
ただ私は、何も考えることなく、健吾に連れられ歩くだけ。
「なぁ、葵。」
健吾の一歩後ろを俯きながら歩く私は、健吾の声に顔を上げた。
「藤森のこと忘れられないみたいだな。」
「--えっ?」
「まだ、好きなんだろ?」
「ちがっ!!」
ゆっくり歩く健吾の背中は寂しそうだった。