金髪の君*完結



顔を離した健吾は、私の頭を撫で歩きだした。

私の手を強く握って。



昇降口を出て、向かう先はグラウンド。

グラウンドに近づくにつれ、歩くペースが遅くなる。

強く握られた手から"逃げるな"と言われているみたいで、止まることはなかった。


"逃げるな"って…?


私は逃げてなんか無い。

私は健吾が大切で、健吾と一緒にいたい。


(まだ、好きなんだろ?)


--違う…



「自分の気持ちを気づかせてやるよ。」


考え込む私を見透かしてか、健吾は呟いた。


「前、見てみ?」


隣に立った健吾に促され顔を上げた--…




「---っ…」



20メートルほど離れた先に立つ心の姿。

長い前髪をゴムで後ろに束ね、ダウンジャケットのポケットに手を入れている。


ドキドキと高鳴る心臓。


奥底にしまい込んだ想いの詰まった箱が開いてしまいそうで、心から視線を逸らした。



「よぉ、元気してるか?」


離れた場所にいる心に、声を投げかけた健吾。

その声は、私をからかう時と一緒だった。


「用ってなんだよ。」


怠そうに言う心。


「なぁ、葵返して欲しいか?」


「えっ!?」


健吾の言葉に瞬時に反応した私は、逸らしていた視線を健吾へと向けた。





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