金髪の君*完結
声をかけられた男の人は振り返り、勢いよく駆け寄って来た私に一瞬驚いたが、すぐに表情を戻した。
「どうしたの?」
肩で息をしする私に笑いかけた男は、目にかかるボサボサの髪を欝陶しそうに横に払った。
「はぁ、携帯もってま、すか?」
「えっ?なんで?」
「実は救急車を…」
「どっか怪我してるの?」
私の体を心配そうに見る彼に
「ち、違います!私じゃなくて彼が…」
「そっかぁ、携帯さ忘れたんだよね…
近くで知り合いと待ち合わせしてるからそいつに借りる?」
「えっ、でも…」
着いて行くのに気が引けた私は、他に誰かいるか周りを見渡してみた。
公園の周りは私達以外、誰一人いなく不気味だった。
「急いでるんでしょ?
ついて来て。」
歩きだした彼に、探すのを諦めた私は、小走りで着いて行った。
住宅街が入り組んだ道を右に曲がり、左に曲がり公園までの道のりがわからなくなった私は
「あ、あのぉ…」
「んー?」
「公園までの道のりがわからなくなっちゃったんですが…」
正直に言ってみた。
「あぁー、大丈夫。
帰す予定ないから。」
「--いっ…」
不意に振り返った彼に、腕を力強く掴まれた。
「な、なんですか!?」
手をばたつかせ、抵抗する私に
「さぁ、お待ちかねだよ。」
男はニヤリと笑い、腕を引き歩きだした。