金髪の君*完結
「---うそ…」
美穂の後ろから顔を出し、教室を覗いた、私は驚きのあまり卒業証書を落とした。
カランッと卒業証書の筒が床にぶつかった音に、視線の先の彼が顔を上げ振り返った。
「あれって心だよね?」
隣で呟く美穂に、彼で間違いないと確信した。
一瞬だけ交わった視線、視線はすぐに逸らされ机に突っ伏した心は、中学生の時と同じ髪の色をしていた。
艶のある黒い髪。
中学の時と変わらない彼がそこにはいた。
(早く俺に追いついてこい。)
--しんちゃん、追いついたよ今の貴方に。
過去を清算し、貴方への思いはあの時のまま。
中学のあの時みたいに、貴方に恋してる。
--だけどね…
私は、これ以上しんちゃんのそばにはいられない。
健吾との日々を後悔はしてない。
--後悔はしていないけど…
私は、しんちゃん以外の人に抱かれた。
しんちゃん以外の人を大切に思った。
そして…---傷付けた…
健吾は私の幸せを願ってる。
私もしんちゃんや健吾の幸せを願っている。
--私以外の人と…
だから私は、この想いを伝えることなく"さよなら"するよ。