恋の方程式
「はいもしもし、萩原です。」
『俺だ。』
久々に先生の声を聞いたような気がする。
「俺だけじゃ分かりません。<俺俺詐欺>ですか?」
『アホか!』
「へへへ・・・」
『悪いな・・インフルなんかにかかっちまって。』
「いいえ、私は大丈夫ですよ。先生はもうお体大丈夫なんですか?」
『まぁな。もう昨日で大分よくなった。』
「よかった・・・」
私は胸を撫で下ろした。
『心配してくれたのか?』
「え!?そっ・・・そんな訳ないじゃないですか!」
『ははは!』
「もぅ・・・」
電話越しの先生の声。
・・・優しい・・・
『悪いが今週は行けねぇ。』
「それは昨日清川先生から聞きました。」
『そうか。』
「えぇ」
『明日授業だろ?』
「え?・・・えぇ」
『頑張れよ?』
「当たり前。」
私は微笑んだ。
やっぱりここ(塾)には野木先生がいないとね・・・
<なっ・・何考えてんだアタシ!>
私は我に返って赤面した。
『どうした?』
「え?」
『いや、急に静かになったから・・・どうしたんだ?』
いえないよ!「赤面してました」って!!
でも・・・
理由言わなきゃ!
「赤面してました!」
ガチャン!
私は大声でそれだけを言い残して思い切り電話を切った。
「よく『赤面してました』って言えたな。」
「・・・えぇ!」
私は清川先生のことをすっかり忘れていた。