恋の方程式
電話越しの声
~翌日午後19時20分~
「こんばんわ~」
「お?萩原。なんで今日も来てるんだ?」
「え?なんでって・・・あ!!」
昨日清川先生に言われたことをやっと思い出した。
<今週授業のある日以外は来なくていいぞ。>
「そうだ・・・今週来なくても良かったんだ。」
「もう毎日塾に行くのが習慣化してるな!」
「習慣じゃなくて日課になってますよ!」
私と清川先生は二人で笑っていた。
(やっぱり塾は楽しいや・・・)
わたしは最近本当にそう思うようになった。
「じゃあ今日も自習しとけ。」
「自習室はどこですか?」
私の通っている塾は自習室が日に日に変わる。
203号室だったり、206号室だったり・・・
空いている部屋がその時の自習室になる。
そんなシステムだった。
「自習室は・・・平先生、どこですか?」
「今日の自習室は・・・」
ねずみ色のカーディガンのこの先生。
「平亮太先生」
ちょっとオカマな先生でわたしは普通なんだけど・・・
友達の間では嫌われている先生。
「今日はカウンターですね。」
「だってよ。」
「やったぁ!」
カウンター。
職員室とつながっていて、いつでも先生に質問できる空間。
わたしは一番ここが好きなの。
<野木先生大丈夫かな・・・>
自習の間、ずっと気にかかっていた。
まぁ私は心配するガラじゃないんだけど・・・
すると職員室に電話がかかってきた。
清川先生は電話の受話器をすばやく受け、
「お電話ありがとうございます。○○塾△△校清川でございます。」
と挨拶をした。
私はここの先生の電話の受け言葉が好き。
だってカッコイイから。
「あ、こんばんわ。・・・えぇ、今日も来てますよ。」
清川先生は私のほうをチラッとみて、話した。
「かわりましょうか?・・・はい。萩原。」
「はい。」
「野木先生から電話だ。」
「え!?」
私は一瞬にしてテンションが上がった。
でも・・・何故?
「受けるか?」
「はい!」
私は勢いよく返事をし、清川先生から受話器を受け取った。