迷える子羊、クールな狼
「外の世界は、こことはまるで違います。お屋敷の中で普通な事が、特別だったりします。」


「貴方は、幸せ?」


「はい?」


「貴方はいつも、笑顔だから」


私は聞いてみたかった。
平民の世界に居た貴方が、いつも眩しい程の笑顔を持つ事を。


「そうですね・・・私は今、幸せだと思います」

「今?」


「はい、あなた様とこうしてお話している事は幸せです」


「ではやはり、貴族の屋敷の中の方が幸せだ、という事ね。外の世界は辛いもの・・・」


そうして私は、また自分を省みた。


ああ、私
恵まれていながら、幸せだと笑顔を零す事も出来ない。

何の取り柄もなければ、幸せを感謝する事も出来ない−
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