迷える子羊、クールな狼
「ある日、まるで私の願いを聞き届けるかのように、私を囲う世界は見事に崩れ去りました。

戦争に負けたのです。

一族が滅びるなど、今の時代は容易い事。

領地を追われた私は、不自由ない生活と跡取りとしての役目と引き換えに、晴れて自由となりました。


・・・・・私はこのお屋敷で貴女の教育係になる前にも、様々な事をしてきました、

生きる為に。

しかし、正直そこも、幸せとは言い難いものでした。


様々な経験を得て、ようやく知ったのです。


・・・幸せは、状況や立場によって決まるものではない、と。


お金があって、召使が居ても、幸せとは感じられなかった。

自由になって、一人で全てを選択する事が出来ても、幸せばかりではなかった。

そこで、ようやく気付いたのです。」
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