迷える子羊、クールな狼
私は、にっこりと微笑んでみた。
「お嬢様・・・顔が引きつっておいでです」
「えっ!」
ほら、と目の前にかざされた鏡には、眉も口も固まったように不自然に形どられ、笑っているというよりは・・・困ってる顔?
「っふ、ふふふ」
そんな自分の顔が可笑しくて、声を挙げて笑わずにはいられなかった。
「ふふっ・・・・・・私の顔が可笑しいわ」
止まらずに溢れる笑いに浸りながら、私は久しぶりの感覚を味わった。
「今、お嬢様の笑顔は素敵でしたよ」
「え、あんな大笑いが?」
恥ずかしい、と手で口元を隠す仕草をするが、ジョセフは傍まで近づくとその手を握り、口元を露わにした。
「綺麗なお顔をされているのだから、笑って下さい」
その時のジョセフの顔も、いつもと同じ笑顔なのだけど・・・
でも何故だろう。
心臓が跳ね上がるように動き出して、その目に見つめられている間は止まらない。
「それでは、勉強を始めましょう」
そう言ってようやく視線をずらされたけれど、
・・・おかしいわ、
まだ動悸がする―