迷える子羊、クールな狼
苦しい生活を強いられている、農民。


恐ろしい争いに巻き込まれやすい、商売。


酒場で身を売る女性を見た時には、余りの衝撃に頭が真っ白になった。



私がこんなに平民の暮らしを知っているのは、小さい頃よく屋敷を抜け出す男の子みたいなお転婆だったから。



令嬢らしくない、男勝りな私。



平民の信じられないような生活を目にして、私は自身の生活がどれだけ恵まれているかを思い知った。




年を経て、屋敷を抜け出さなくなった私は令嬢らしく振る舞うようになった。


一生懸命働く、同じ年の女の子を見つけたから。


私は動きやすいように男の子の格好をしていたから、女の子と気付かなかったみたい。



『私も綺麗なお嬢様になって、あなたとダンスを踊れたらいいのに』



女の子は笑顔だったのに、次第に顔を歪ませて、ボロボロと涙を流した。


『私も、貴族のお家に生まれたかった・・・』



その日から私は、麗しい令嬢にならなくちゃ、と


そう思った。
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