―百合色―
俺は期待するんだ。


もう一度振り返って、
俺に手を振ってくれるかもしれないと─…


俺はマナの小さな背中を見て、期待するんだ─…


でもその期待は砕けた。


マナは一回も俺を見る事なく、ホームへと消えて行った。


俺は、上を向いた。


込み上げてくる、熱いものを止める為。


『やっぱ女って信じれねぇなぁ…』


次第に、視界がぼやけてくる。



目に溜った涙は、溢れでて、俺の頬を流れていく。


初めて泣いたかもしれない。


異性の事で初めて出した涙は、喜びの涙ではなく…


悲しみの涙──…



その涙は、駅に堕ちていく。

少し跳ねかえり、
涙の跡を残した。



俺の中には、二つの文字が浮かんでいた。

まず、一つ目は『やり直し』

そして、二つ目は



『別れ』
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