―百合色―
無意識のうちに、あの場所へと向かっていた。


最近見つけた、あの場所。

俺の尊敬している人の好きな場所。


初めて来た時、
気に入った場所。


俺だけの秘密の場所─…


一歩一歩、桜の木とベンチへと進んでいく。



近付くにつれ、ベンチに人影が見えた。


女の人─…


後ろ姿で、暗くて誰なのか分からない。



この人もこの場所知ってるんだ?



俺は更に近付く。


何かが聞こえてきた。


女の人がブツブツと何かを言っていた。



あの女の人は…


ようやく見え始めた。


あの女の人は…


百合だ。


何故こんな所に百合が?



『…百合?』


百合は、俺の声に反応した。

百合は、俺に、温かな笑顔を見せた。
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