―百合色―
『やめて!今ね、すごくいい気分なんだ!すっきりした!
だから気分壊さないで?
何も言わないで…
ありがとう…光輝…』



百合から聞こえた言葉で、俺は止まった。


さっきまで言おうとした言葉が、出なくなった。


百合に何も言えない。


どうしてあの時言わなかったのだろう。


俺は自分で自分を苦しめた。


百合は、立ち上がり、俺の前から少しずつ去って行ってしまった。


その百合を、後から追い掛ければいいのに、
俺は出来なかった。


この街と同じで、光がない。

今日は月も、あの星も出ていなくて、空にあるのは、薄汚い曇った雲。


今日の空は、俺の心みたいだ。


一人残された俺には、


後悔と、無力な自分しか残されていなかった。


百合に言えば良かった。


俺のこの膨らんでいく気持ちを─…



空は、また曇りだした。
俺の心と一緒に。


この膨らんだ気持ちは、

封印したままだろう─。


俺の中で。


いつか、この封印した気持ちを、誰のために開けるだろうか─…
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