―百合色―
曇った空に、
明るい月はなかなか顔を出してくれなくて─…


俺はそんな空を見ながら、君を想う。


百合の告白の言葉が、
俺の中に素直に入ってきて、

もう迷わないと思ったのに…


答えは出たと思ったのに…

最初に戻ってしまった。


もう一度、答えを探したいけど、見つからない。


自分には、後悔と無力しか残されていないからだ。


ポケットの中にある携帯を取りだし、メモリから百合を見つけ、連絡をすればいい話なのに、


今の俺には、それすら考える余裕がなかった。


百合の告白は、


今まで告白されてきた中で、

一番心に残り、


一番痛い。



その痛さをため息に変え、この街をため息ばかりにする。


俺の頭に浮かぶモノ。


俺にしか見えない。


俺の中にあるモノ。


俺にしか分からない。



それは、愛しい人。
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