―百合色―
世界中にいる人間には、
必ず一人、自分の中に誰かが眠っているはずだ。


それは誰?


一番分かっているのは、
その人間。


自分にしか分からない。


確実に、その中の人は、

愛した人や、

愛している人─…


俺の中にも、一人だけ、愛しい人が眠っている。


それは、マナではない。


あの最高の笑顔を見せる人。


百合なんだ。



そう空に呟くと、
さっきまで曇っていた空から、丸い大きな月が顔を出した。


『俺、間違ってる?』



間違っててもいい。

君を失いたくない。


もう遅いかもしれない。


遅くてもいい。


俺は俺がしたいようにする。


周りの人なんか関係ない。

自分のペースで、

自分の力で、

ゆっくり愛を育てていく。
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